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『どんぐりファイターズ』誕生秘話、っていうか足跡

ACT2 どんぐりはいかにいい加減か、についての考察


 初めて3人がスタジオでセッションをしてから、4年も経っただろうか?
 どんぐりは、いまだライブを行っていなかった。
 主な原因は「ブッキングがめんどい」から。
 はっきり言って、ロクでなしである。そりゃ、めんどいさ。でも誰も喜んでブ
ッキングなんてするわけないんだから、ちょっとは我慢して頑張ってみるのが大
人ではないか。じゃあ、彼らは大人じゃないのか? え? まだうぶ毛なのか?

 しかも、バンド名すらなかった。
 彼らには「ロック的なかっこよさは恥ずかしい」という共通認識があったか
ら、なかなか決まらなかったのだ。
 確かに「ブラックなにやら」とか「P.T.A」とか「サロン・ド・クロワッサ
ン」とか、そーいうのって、メンバーが日本の国籍を持っている限り、かなり恥
ずかしい。「お盆、帰った?」なんて会話のあるバンドがフランス語でどーす
る、ってなもんだ。
 バンド名すら決まらないのに、ブッキングなんてする訳がない。そーいう言い
訳にもなっていたのだ。

 ふつー、リーダーが先陣を切って「ライブをやろうぜ!」と叫ぶらしい(メン
バー募集するときは「バンドやろうぜ!」が合い言葉らしい。詳しいことは知ら
ないが)。
 がしかし、どんぐりにはリーダーはいなかった。いない人は叫べない。が、世
話役はいた。メンバーの送り迎えをする、じょーである。しかし、世話役は、自
らライブ敢行を言い出さない。職域がどうのこうのではなく、彼もまた立派なロ
クでなしだったから、純粋にめんどかったのだ。
 そしてなにより、作詞作曲&ボーカルの河原が、人前で歌う度胸がなかったと
いうのが、最大の原因であった。

 どんぐり結成時、河原が持ち出した条件があった。それは「俺のオリジナル
を、俺に歌わせてくれ」だった。
 見事なまでの「俺節」だ。土田世紀もびっくりだ。
 それまで河原がいたバンドでは、彼が作曲をしても、ボーカリストが作詞と歌
という、けっこーおいしいところを持っていくという至ってJポップス的な運営がな
されていたという。河原脱退も、それに対する不満が募ってだったらしい。
 作詞作曲&ボーカル&ギターという栄冠を手にして、お腹一杯になってしまっ
たのだろうか? 河原は「俺、初心者だし、まだ人前で歌うには……」と、なか
なかライブを承諾しなかった。

 しかし、出来ないとなると、したくなるのが人情。じょーと坂井はもー「した
いしたい!」の高校生状態。気が付くと電車の中で「してーなあ」とひとりごと
を言って、近くに立っていたOLのおねーさんが気味悪がって逃げてしまうほどだ
った。

 そんなある日。じょーが手伝いで参加していたカルメン・マキのコピーバンド
が「東高円寺ロスアンジェルスクラブ」でライブをする事になり、対バンを探し
ていたため、強引に出演を決めてしまう。「好きなんだから、なにをしてもい
い」という理論に近い。一歩間違うとストーカーである。「ボクに愛されるのが
彼女のためなんだ」である。いや、ちょっと違うか。

 二人は渋る河原をなだめ、すかし、おだて、くすぐり、舐め、押し倒し、いや
舐めはしなかったが、とにかくライブ敢行を承諾させた。やはり、やりたいパワ
ーは素晴らしい。

 初ライブ当日、当然と言えば当然の質問が、お店のスタッフから投げかけられた。
「バンド名は何ですか?」
 さあ、困った。三人はもちろんロクでなしなので、貯金と同様、前もってバン
ド名を決めておくなんていうリスクヘッジをしている訳がない。でも、名前がな
きゃどーしよーもない。さあ、どーしよう? かと言ってださださなのは勘弁だ。
練習中、よく冗談で言っていた、河原がこどもの頃バカにしていた隣町の少年野
球チーム「伏見町どんぐりファイターズ」なんて、その最たるもんだ。なんだ、
どんぐりファイターズって。どんぐりがバット振るのか? ストライクゾーン狭
すぎ! 名前付けるにも、もー少しセンスってもんがいるだろう。どんぐりっ
て、あんた、ねえ。どんぐりって。どんぐり。どんぐり? どんぐり……。

「どんぐりファイターズです!」

 責任追及という一点において、日本はいまだ先進国とは言い難い。
 社会的に影響のある事件でも、立件されることなく、責任も追及されず、誰か
が進退伺いを出して事がうやむやにされてしまう。
 だから、という訳ではないがこの「どんぐり発言」の犯人は、明確にされてい
ない。
 が、この不用意な一言で、このバンドの名前は決まってしまった。
「どんぐりファイターズ」
 通称、どんぐり

 僕らの愛すべきバンドは、こうして命名された。

(Text by Roy)

ACT3へ続く


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