『どんぐりファイターズ』誕生秘話、っていうか足跡

ACT3 どんぐりたちの肖像


 意外なことに、初ライブは好評を持って幕を閉じた。
 対バンのメンバーや店の人に「それで初めてなの? いやあ、好きだなあ、そ
ーいうの」なんていう甘い言葉にとろけてしまったのだ。
 河原に至っては、少しライブまでの間が空くと「次はいつやる? 早くやろお
よお」とせがむようになってしまった。つきあい始めたころは処女だったのに…
…みたいなもんである。そんなに体力ないっちゅうに。

 ともあれ、ライブバンドとして活動を開始したどんぐり。
 このあとはしばらく、数人のお客を相手に不定期にライブを行い、ステージと
客席の人数を競う、という状況が続くことになる。つまり、アルバムをリリース
するまでの彼らの姿にこの駄文が追いついた訳だ。そこでこの回では、どんぐり
のオリジナル曲はいかにして生まれるかなんていう、興味のない人にはまったくど
ーでもいいことを、ちと解説しようと思う。決して、穴埋め企画ではない。

 曲作りは、河原が家でメロディとギターパートを作って来るパターンと、ギタ
ーリフだけ作ってきて、それを元にバンドでリズムや構成のアレンジのアイデア
を出して、河原がメロディを乗せるパターンがある。
 河原の作ったメロディーにダメを出すのはじょー。その判断基準は「メロディ
がポップすぎて恥ずかしい」とか「ちょっと歌謡曲入ってるんじゃない?」と
か。自分で作らないくせに、非常に偉そうである。が、彼も音楽をやっている人
なのだ、実は。お腹は出てるが。
 また、せっかく曲が出来たと思ったら、河原の歌のキーが合わなくてボツ、と
いうこともある。これはみんながっくりくる。それはそうだ。でも、なぜ途中で
気が付かない?
 せっかく曲のアレンジが決まってからでも、バンド全員で「これちょっとヘビ
メタっぽくてヤバイね」とボツになるパターンもある。どんぐりにも、けっこー
シビアな一面はあるのだ。

 タイトルを付ける段になって煮詰まることがままある。どーもこの人たちは、
ネーミングセンスがないらしい。ちなみにアルバム未収録で「少女鉄仮面伝説」
という曲がある。やっぱり断言するが、ない。ネーミングセンス。しかも、最近
では「俺の料理」という新作がお目見えしたらしい。もちろん、曲の内容にはま
ったく関係ない。人間、進歩しなくてどーするんだろうか?

 そーいえば、前回一話分のクライマックスであった「どんぐりファイターズ命
名秘話」だが、実は後日談もある。
 ライブでMCを担当するじょー曰く「どんぐりファイターズの本橋です」と名
乗るのはかなり恥ずかしいらしい。だから、しばらくはバンド名の最後に(仮)
を付けていたそうだ。そんなめんどいことする暇があったら付け直せ、そう思う
のが普通である。が、彼らは悲しいことにセンスがない。ある意味、席を譲って
あげなければいけないくらいなのだ。不自由な人たちなのだ。暖かい目で見守
る、それが人としての優しさだ。

 バンドらしく、メンバー間には微妙な力関係もある。生意気に。
 坂井は奥手な人柄からか、あるいは他の二人に比べ常識をわきまえているから
か、今ひとつ押しが足りない。が、彼はRUSHやTHE WHO、YESなどのベーシス
トが好きで弾きまくるスタイル。大人しくバッキングに徹したベースはまず弾か
ない。
 河原は「俺様」なのに、好きなニール・ヤングなどの影響で、あまりギターソロ
にこだわっていない。どちらかと言うとリズムギタリスト。
 じょーはZEPのボンゾが好きなので、でかい音でバカスカ叩きたがる。「俺は
グルーヴが好きなんだ」とかもっともそうなことを言いながら、大人しくリズム
に徹する事が出来ない。

 方向性やらスタイルやらのバラバラな彼ら。
 しかしそんなもん、違ってて当たり前なのだ。みんなして同じ方向を向いていたら、
それはまるでジャンボ・ジェット機だ。いや、そんなにでかくないか。じゃー、観覧車でどうだ。
いや、それじゃー、同じ所ぐるぐるか。
 
 肉眼では確認できないそんな「方向性の相違」を乗り越えて、彼らは活動を続
けている。各々が好き勝手に演奏をしていると言い換えてもいいかもしれない。

 だが、それはメンバーがお互いに認め合っているから成り立つことなのだ。認
め合っているからこそ、それぞれのパートを任せることが出来る。

 好き勝手にすること。それだけが、どんぐりにとって唯一無二のルールなのだ。

(Text by Roy)

ACT4へ続く


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