『どんぐりファイターズ』誕生秘話、っていうか足跡
ACT4 どんぐり奮戦す(?)
ライブをしたことのある人ならご存じだろう。あるいは商店の経営者、もしく
は日本野鳥の会、大道芸人なんでもいい。
とにかく、数を稼ぐというのは大変なのだ(ひとつ不適当?)。
どんぐりたちも、オーディエンス獲得に四苦八苦していた。
初ライブはお友達バンドとのジョイント企画で、ハコ(ライブハウス)は貸し
切りだった。ぱらぱらと帰る客もいたが、最後のバンド目当てでどんぐりもつい
でに聴いてくれた客がいた。
が、それ以降、どんぐりは連続観客動員数片手以下をぐいぐいと更新することにな
る。
「東高円寺ロサンゼルス・クラブ」では約2年間、ふた月に1度はライブを行った
のだが、その間ずーっと、ずーーと、しつこいようだがずーーーっと、観客は
ほぼ0だった。少数精鋭の観客。精鋭にする対象を間違えている。
普通、ヘコむ。それだけ観客が少なければ、普通はぺしゃんこになるハズだ。
が、しかし、どんぐりは潰れなかった。
オレ様河原が平気だったのが、最大の理由だったのかもしれない。
初ライブ終了後、対バンの友人宅になだれ込み記録用のビデオを見たとき、そ
のバンドのヴォーカルに「この曲かっこいい!」だの「サイコー!」だのの絶賛
をいただいたことの嬉しさ貯金がまだ残っていたのだ。河原は、とにかく自分の
曲が誉められることが一番嬉しいからだ。あ、言い忘れたがそのヴォーカル、女
の子。そこもまた、大きい。
では、客が増えるような、なにやら企業努力みたいなことをどんぐりはしたの
か、というと、そーでもない。まず、当時じょーがMCをしていない。ま、今でも
たいしたことはしゃべってないのだが、その頃はまったくしゃべっていない。美
サイレント、山口百恵。
メンバーはただ黙々と演奏する。約1時間の公開リハだ。そんなもんに客が来
るはずがない。ええ来ませんとも。来たらびっくりだ。
危機感と話し合いのないバンド、どんぐりファイターズ。
そんな彼らの代わりに心配してくれる人がいた。世の中捨てたもんじゃない。
なんなら新聞に投書してもいいくらいの、ちょっといい話だ。
それはハコの音響エンジニア氏だった。どんぐりメンバーと同世代で、なによ
りもどんぐりの実力を買っていた。
河原は自分と同じかそれ以上の音楽センスや知識がない相手には、口もきかな
いという、ある意味ストイックな男だ。エンジニア氏はまず、その河原を籠絡し
た。っていうか、手なずけた。
「マイクに向かって歌え!」「声が拾えなくてどんだけ苦労してるか、分かって
るか?」 ライブが終わり、そんなエンジニア氏のダメ出しがもらえるようにな
って、ヴォーカルは確かに進歩した。「今でも袖に向かって歌ってるじゃん!」
という、どんぐり玄人な突っ込みはしてはいけない。ちょっとなんだけど、確か
に進歩したのだ。そういうことにしてくれ、頼む。今回、ちょっと弱気。
どんぐりには「オレ様」の他にも同じようなメンバーがいる。いや、じょーの
腹がほてい様で「様つながり」とかそーいうんじゃなくて。ま、ある意味そーな
んだけど。いや、だから、違うってばよ。
ベースの坂井。彼は「ひとり親分」だ。温厚で寡黙、そして痩せぎす。密かに
好感度の高い、ナイトメア・ビフォア・クリスマスな彼なのだが、これがまた、
人の言うことを聞かない。誰を服従させるわけでもないのだが、徹底的に独立独
歩。
坂井のベース音色は、けっしてバンド全体の音に溶け込まない、特異な音色
だ。自分が前に出る音。立ち位置は後ろでも音は前。ボロは着てても心は錦、チ
ーター(今回のボケテーマはこれか?)。
エンジニア氏からそこいらへんの指摘があっても、その場では「うーん、そう
ですね」なんて人当たりのいいことを言いながら、絶対直さない。即座に否定し
ないのだ。前向きに善処、鋭意努力、やぶさかでない、なのだ。
そしてもう一人のメンバー、じょーにもダメ出しはあった。
が、ハネがどうのとかオカズのバリエーションが少ないとか、そーいうことでは
なかった。全体的な出来の善し悪しを判断してくれたのだ。
ちなみに、一度個人的にエンジニア氏とスタジオに入ったとき「あれ? じょーの音っ
て、たいして大きくないね」と言われて一瞬むかっとしたらしい。あくまでも一
瞬だ、と本人は言うのだが、実はけっこー気にしているらしい。じょーも男。大
きい小さいにはやはり固執するのだ。もし男性にメンタル・アタックをしたいの
なら、とりあえずやっちゃった後でぽそっと「小さいからって気にしなくていい
よ」と、いかにも親切っぽく言ってみなさい。確実に、死ぬ。2週間は、死ぬ。
こうしてどんぐりは観客動員数の少なさにめげず、っていうかちっとも気にし
ないまま、っていうか少しは気にしろよなってな感じでライブ活動を続けていた。
しかしこの雌伏の時期に、どんぐりはエンジニア氏という心強いサポーターを
ゲットした。彼の活躍は、第6回に明らかになるのだが、それはまあ、伏線とい
うことで。バラしておいて伏線もないもんだ、という意見もナシ。ボケ逃げ、で
ある。
(Text by Roy)
ACT5へ続く
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